おっさんが無理するから・・・・


これ実はわりと最初に作った文章。

なんか設定とか口調とかがブレブレだし、かなり生っぽい(嘘文章なのに)感じで読みにくいけど、まぁヲタサーってこんなタイプのもあるよなって感じで。

D氏のことだけなんかあんまり思い出せなかったので本文でも曖昧www



 最初の接触は、アニメコミュのトピックだった。


「今期覇権はこれで確定」


 というA氏の挑発的な書き込みに、私が長文で反論したのが始まりだ。

 そこにB氏が乗り、C氏が静かに補足し、D氏がどうでもいいAAを貼り、最後に姫が一言。


「まあ、全部見ればいいんじゃない?」


 その一言で場が収束した。

 不思議な統率力だった。


 やがて「じゃあオフやりますか?」という流れになり、大規模オフ会が開催された。会場はすすきののカラオケボックス。


 初対面の印象は強烈だった。


 A氏は思ったよりもイケメンだった。細身で、髪はゆるく巻き、どこか気取った雰囲気。実家が金持ちだという噂は本当らしく、さりげなく「うちのワインセラーがさ」とか言う。

 将来はバーテンダーになりたいらしい。理由は「夜の男って、かっこよくない?」だった。


 B氏は人懐っこい大学生。姫の隣を自然にキープする技術が異様に高い。

 C氏は猫背で、常に床を見ているような男。だがカラオケでアニソンが流れると急に声量が倍になる。

 D氏は……なんだったか。あだ名があったはずだが、今でも思い出せない。存在感が薄いわけではないのに、記憶がすり抜けるタイプだ。


 そして姫。


 黒縁眼鏡、ショートボブ。すらりとした体型。

 服装はシンプルで、変に女の子らしくない。

 腕を組み、少し斜に構えた態度で笑う姿は、たしかに「海賊の女船長」という形容がぴったりだった。


「年齢? まあ、気にしないでしょ」


 姫はあっさり言った。

 私は救われた気がした。


 その日はアニソン縛りで三時間。

 私は懐かしの90年代曲を入れ、彼らは最新の深夜アニメ主題歌を歌う。

 世代差はあったが、モニターに映る歌詞の前では全員が平等だった。


「今度、モン〇ンやりません?」


 B氏が言った。


 私はその誘いに本気で乗った。

 翌週、PSPとソフトを購入した。



 最初のうちは、確かに楽しかった。


 C氏は神がかっていた。

 普段はボソボソ喋るのに、狩りが始まると声が変わる。


「そこ、回避。甘い。尻尾来る」


 指示は的確。

 モンスターには容赦なく、弱い装備の私にも容赦がない。


「装備、強化してください。素材、足りないなら自分で周回を」


 冷酷だった。


 B氏は姫を徹底サポート。

 回復薬を惜しみなく投げ、姫がピンチになると即フォロー。


 A氏はプレイ自体は並だが、やたらと喋る。


「狩りってさ、人生に似てない?」


 似ていない。


 D氏は……やはり思い出せない。


 やがて私は気づく。

 B氏が私を誘ったはずなのに、次第に集まりの連絡が来なくなっている。


「え、昨日やってたの?」


「急に集まった感じです」


 急に、が増えていった。



 それでも私は食らいついた。

 大学の学祭に誘われたときも、顔を出した。


 キャンパスは若さで溢れていた。

 焼きそばの匂い、軽音部の爆音、コスプレサークルの列。


 私は場違いなスーツ姿だった。


「おっさん、浮いてますよ」


 姫が笑う。

 悪意はない。


 A氏は模擬店でカクテルを作り、「やっぱ俺、バーテン向いてるわ」と悦に入っていた。

 B氏は姫と写真を撮り、C氏はゲーム研究会のブースで黙々と対戦。

 D氏は……どこかにいた。


 私は、その輪の中にいる“つもり”だった。



 きっかけは些細なことだった。


 姫が風邪をひいたとき、私が「大丈夫?」とメッセージを送った。

 それだけだ。


 返事は普通だった。

 「ありがとう」と。


 だが、その後から空気が変わった。


 グループメッセージに私がいない。

 オフ会の写真にタグ付けされない。

 ログインしても足あとが減っていく。


 姫にちょっかいを出した覚えはない。

 下心も、たぶん、なかった。


 だが、オタサーという閉じた空間では、好意のベクトルは可視化される。

 誰がどのくらい姫と近いか。

 誰がどの位置にいるか。


 見えない序列が、じわじわと形を持ち始めていた。


 D氏との距離が開いたのも、その頃だ。

 以前は私と一緒に帰ったりしていたのに、いつの間にかB氏側に立っていた。


 冷戦。


 表立った衝突はない。

 だが、確実に線が引かれていた。



 A氏が言い出した。


「このサークル、もっと“形”にしない?」


 オタクの集まりを、イベント団体にするという。

 コスプレ撮影会、同人即売会出展、バーイベント。


「俺、将来バーテンだし。コンセプトバーとかできるっしょ」


 姫は腕を組んで聞いていた。


「面白いけど、責任持てるの?」


「持てるよ。実家太いし」


 その一言が、妙な亀裂を生んだ。


 C氏は金の話に敏感だった。

 B氏は姫の意向を探る。

 D氏は相槌を打つ。


 私は、もう発言権を持っていなかった。


 決定的な夜は、突然来た。


 mixiに上がった、姫の日記。


タイトル:ごめんね


 いろいろ考えました。

 私、サークル抜けます。

 誰が悪いとかじゃないけど、疲れました。

 あと、Aとはちゃんと話しました。

 これ以上は言いません。


 コメント欄が爆発した。


 B氏は「どういうこと?」と連投。

 C氏は沈黙。

 D氏は「とりあえず落ち着こう」。


 そしてA氏の更新。


タイトル:責任


 俺の軽率さが原因です。

 姫と付き合ってました。

 でも、うまくいきませんでした。

 サークルは解散します。


 頭が真っ白になった。


 付き合っていた?


 あの水面下で?


 冷戦の正体は、それだったのか。


 さらに追い打ちをかけるように、B氏の日記。


タイトル:全部、知ってた


 正直、最初から分かってた。

 でも言えなかった。

 俺、姫のこと好きだったから。


 崩壊は一瞬だった。


 グループは消え、コミュは凍結。

 C氏はアカウント削除。

 D氏は名前を変えた。


 そして、私には何の連絡もなかった。


 数年後、偶然街でA氏を見かけた。

 本当にバーテンダーになっていた。


 カウンター越しに目が合う。


「……久しぶりっすね」


 それだけだった。


 姫の消息は知らない。

 B氏も、C氏も、D氏も、今どこで何をしているのか。


 ただ一つ分かるのは、私は最初から“部外者”だったのかもしれないということだ。


 年齢の差ではない。

 覚悟の差でもない。


 あの輪は、最初から五人で閉じていた。


 私はそこに、たまたま映り込んだ通行人。


 mixiの足あと一覧に残る、

 消えない既読のような存在。


 あの頃のオタサーの姫は、海賊船の船長のように笑っていた。


 そして船は、嵐の中で静かに沈んだ。


 誰にも看取られずに。

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